最近の記事
- 日本一かもしれないカツラ巨木 05月16日
- ハリギリ 青森市孫内 01月04日
- サイカチ 平川市 保食神社 01月04日
- 「集団」行動の最適化 長谷川英祐 02月06日
- 八戸市 山ノ神と巨木 01月16日
- 雪の日の風景 12月29日
- 青森市桜川物語 08月26日
- 弘前市 桂清水と灯明杉 05月17日
- 春一番の花 03月25日
- 雪の散歩道 02月21日
「集団」行動の最適化 長谷川英祐
2011年02月06日 08:52
日本動物行動学会 2004.1.1newsletterより抜粋 22P〜23P
お利口ばっかりでも,たわけばっかりでもダメよね! 〜「集団」行動の最適化〜
長谷川英祐(北海道大院・農)
集団生活をする生物は数多くいるが,その集団が全体として特定の機能を持つときには,集団間に集団レベルの選択がかかることになる。通常,生物は個体レベル選択により,行動・形質が最適化されていると考えられているが,個体の上位階層である集団レベルの選択が同時に存在するとき,集団全体のふるまいの最適化のために集団中の各個体に要求される属性は必ずしも一つではない。たとえば,アリには形態的に異なる複数のワーカーカストを含むものがいるが,ある一つの事象(たとえば採餌)に対処するときのそれぞれのカストの行動パターンは大きく異なっている。しかし,それらが組み合わされた状態ではじめて目的を効率よく達成できるようになっている。従って,個体- 集団の階層性が存在する場合,個体レベルの最適化の予測とは異なる属性が個体に要求されるかもしれない。このような問題について考えるため,今回のラウンドテーブルでは,集団生活をする生物としてアリの集団行動を取り上げた。一般的なイメージでは「勤勉な働き者」であるこの昆虫の,コロニー内の個体の労働・非労働行動の頻度分布の個体差やその意味,集団レベルでの最適化が要請されるときの個体の行動属性のシミュレーションモデルによる解析,アリの情報伝達物質であるフェロモンによる集団行動の制御などについて3名の演者による講演を行った。
第一演者の長谷川英祐(北大院・農・生物生態体系)は,カドフシアリのコロニーを個体識別した上で行動を追跡した研究を紹介した。その結果,コロニー内の他個体に直接貢献する「労働行動」を長期にわたりしない個体が総ワーカーの1 〜2割存在することを示した。さらに,「働き者」「怠け者」をそれぞれ取り除いたコロニーで,残された個体の労働パターンがどのように変化するかを調べたが,働かないものは働かないままであり,働き者を失ったコロニーで不足する労働を補ったのは次に働いていた個体であった。「働かないワーカー」はトゲオオハリアリ,ミツバチなどでも存在することが示されており,社会性昆虫に広く存在する可能性が高まったと言える。働かない個体がどのような存在なのかは,今後の解明を待たねばならないが,働かないワーカーは単なる利己的な個体ではなく,働かないことそのものがコロニーの存続にとって意味を持っている可能性もある。また,ある瞬間を見ればワーカーの6 〜7割は働いておらず,コロニー全体が効率よく稼働するための個体稼働率の問題なども今後アプローチされるべき課題であることが指摘された。
第二演者の西森拓(大阪府大院・工・数理工学)は,アリをモデルにしたシミュレーション模型により,ランダムに餌が出現する2ヶ所の餌場での採餌行動において,個体のフェロモン追従効率の個体差がどのような頻度で存在するのが効率的なのかについて検討した研究を紹介した。興味深いことに,フェロモン追従効率において,フェロモン濃度に正確に反応する「お利口個体」のみでは時間あたりの餌持ち帰り量は最大化せず,フェロモン濃度を正確に追跡できない「バカ個体」が一定割合存在する時に採餌効率が改善されることが示された。さらに興味深いことに,フェロモン濃度に対しある程度ミスをする,ややバカな個体よりも,まったく追跡できない大バカな個体の方が,効率改善により貢献していた。力学的な解釈としては,「大バカ個体」は新たな餌場の探索者として機能している,あるいは回り道をショートカットする効果などが考えられるが,いずれにせよ,システム稼働時に短絡的に考えたときの最適な行動から見て,非効率的に見える行動が混在する方が全体の効率が上がる場合があることが示された。
第三演者の秋野順治(農生研・生体機能)は,実際のアリを用いた,フェロモン追従能の個体差の測定結果や,フェロモンによる動員時の個体の行動を紹介した。まず実験により,フェロモン追従能には同一コロニー内の個体でも相当程度のばらつきが存在し,西森のモデルの設定が非現実的ではないことが示された。また,クロクサアリにおける野外でのフェロモントレイルの形成パターンが紹介され,すでに形成された蟻道上と,未知の場所の探索が必要な末端でのアリの行動の違いが紹介された。さらに,トビイロシワアリにおける採餌時のフェロモンによる動員行動で,餌の種類による行動の違いや,餌回収の時間的な経過に伴う必要行動の変化に対応した動員行動の変化などが紹介された。これらの研究ににもとづき,アリ個体というごく単純な行動規則に従う昆虫が,様々な状況に対応した集団行動をどのように成し遂げているかについて考察が行われた。
以上の講演から,個体- 集団の階層性を持つ生物においては,集団をシステムとしてとらえ,システムを構成する個体の機能的ばらつきの必要性や,単純なルールにより高度な集団行動がどのように実現されるか,といった視点からのアプローチが,動物行動学の新たな一視座として重要であることが提言された。
お利口ばっかりでも,たわけばっかりでもダメよね! 〜「集団」行動の最適化〜
長谷川英祐(北海道大院・農)
集団生活をする生物は数多くいるが,その集団が全体として特定の機能を持つときには,集団間に集団レベルの選択がかかることになる。通常,生物は個体レベル選択により,行動・形質が最適化されていると考えられているが,個体の上位階層である集団レベルの選択が同時に存在するとき,集団全体のふるまいの最適化のために集団中の各個体に要求される属性は必ずしも一つではない。たとえば,アリには形態的に異なる複数のワーカーカストを含むものがいるが,ある一つの事象(たとえば採餌)に対処するときのそれぞれのカストの行動パターンは大きく異なっている。しかし,それらが組み合わされた状態ではじめて目的を効率よく達成できるようになっている。従って,個体- 集団の階層性が存在する場合,個体レベルの最適化の予測とは異なる属性が個体に要求されるかもしれない。このような問題について考えるため,今回のラウンドテーブルでは,集団生活をする生物としてアリの集団行動を取り上げた。一般的なイメージでは「勤勉な働き者」であるこの昆虫の,コロニー内の個体の労働・非労働行動の頻度分布の個体差やその意味,集団レベルでの最適化が要請されるときの個体の行動属性のシミュレーションモデルによる解析,アリの情報伝達物質であるフェロモンによる集団行動の制御などについて3名の演者による講演を行った。
第一演者の長谷川英祐(北大院・農・生物生態体系)は,カドフシアリのコロニーを個体識別した上で行動を追跡した研究を紹介した。その結果,コロニー内の他個体に直接貢献する「労働行動」を長期にわたりしない個体が総ワーカーの1 〜2割存在することを示した。さらに,「働き者」「怠け者」をそれぞれ取り除いたコロニーで,残された個体の労働パターンがどのように変化するかを調べたが,働かないものは働かないままであり,働き者を失ったコロニーで不足する労働を補ったのは次に働いていた個体であった。「働かないワーカー」はトゲオオハリアリ,ミツバチなどでも存在することが示されており,社会性昆虫に広く存在する可能性が高まったと言える。働かない個体がどのような存在なのかは,今後の解明を待たねばならないが,働かないワーカーは単なる利己的な個体ではなく,働かないことそのものがコロニーの存続にとって意味を持っている可能性もある。また,ある瞬間を見ればワーカーの6 〜7割は働いておらず,コロニー全体が効率よく稼働するための個体稼働率の問題なども今後アプローチされるべき課題であることが指摘された。
第二演者の西森拓(大阪府大院・工・数理工学)は,アリをモデルにしたシミュレーション模型により,ランダムに餌が出現する2ヶ所の餌場での採餌行動において,個体のフェロモン追従効率の個体差がどのような頻度で存在するのが効率的なのかについて検討した研究を紹介した。興味深いことに,フェロモン追従効率において,フェロモン濃度に正確に反応する「お利口個体」のみでは時間あたりの餌持ち帰り量は最大化せず,フェロモン濃度を正確に追跡できない「バカ個体」が一定割合存在する時に採餌効率が改善されることが示された。さらに興味深いことに,フェロモン濃度に対しある程度ミスをする,ややバカな個体よりも,まったく追跡できない大バカな個体の方が,効率改善により貢献していた。力学的な解釈としては,「大バカ個体」は新たな餌場の探索者として機能している,あるいは回り道をショートカットする効果などが考えられるが,いずれにせよ,システム稼働時に短絡的に考えたときの最適な行動から見て,非効率的に見える行動が混在する方が全体の効率が上がる場合があることが示された。
第三演者の秋野順治(農生研・生体機能)は,実際のアリを用いた,フェロモン追従能の個体差の測定結果や,フェロモンによる動員時の個体の行動を紹介した。まず実験により,フェロモン追従能には同一コロニー内の個体でも相当程度のばらつきが存在し,西森のモデルの設定が非現実的ではないことが示された。また,クロクサアリにおける野外でのフェロモントレイルの形成パターンが紹介され,すでに形成された蟻道上と,未知の場所の探索が必要な末端でのアリの行動の違いが紹介された。さらに,トビイロシワアリにおける採餌時のフェロモンによる動員行動で,餌の種類による行動の違いや,餌回収の時間的な経過に伴う必要行動の変化に対応した動員行動の変化などが紹介された。これらの研究ににもとづき,アリ個体というごく単純な行動規則に従う昆虫が,様々な状況に対応した集団行動をどのように成し遂げているかについて考察が行われた。
以上の講演から,個体- 集団の階層性を持つ生物においては,集団をシステムとしてとらえ,システムを構成する個体の機能的ばらつきの必要性や,単純なルールにより高度な集団行動がどのように実現されるか,といった視点からのアプローチが,動物行動学の新たな一視座として重要であることが提言された。
八戸市 山ノ神と巨木
2011年01月16日 11:39
青森市桜川物語
2010年08月26日 20:15
青森市の桜川といえば春の桜がトンネルのように続く桜並木で有名です。
4月下旬には桜川町内会と桜川商店会によるライトアップや、道路を車両通行止めにしての祭りが開催されています。
青森市内で一番早く咲きだすといわれ枝ぶりの良い大木である桜川の桜は、40年程前に一人の人物の寄付によって植えられたのでした。
昭和41年、それまでは田んぼの広がるこの地区に青森県住宅供給公社が桜川団地を造成し、同年に分譲を開始しました。当初この道路にはプラタナスが植樹されていましたが、42年に青森市の議員による視察の際に、すでに入居していた住人から「桜川という地名なのに桜の木は一本もない」という話が出て、当時青森市議会議員であった山上清三郎氏が個人でソメイヨシノの苗木900本程を寄贈しました。
43年春、十数戸の住民総出で、桜の木は一日で植えられたそうです。山上清三郎氏は荒川に住んでいましたが、氏の呼びかけにより荒川の住民有志もバスに乗って桜川の植樹の手伝いに出かけたとも聞きました。
当初は900本近くあった桜の木も、枯れたり傷んだものを伐採し、現在は350本。
植樹に携わった桜川住民にも桜の木は分けられ、現在でも何本かは個人の家の庭にも植えてあるとのこと。
私がこの話に興味を持ったのは、ネット上の友人であり故山上清三郎氏の孫でもあるK氏の話からでした。
「祖父さんは借金で桜の木を植えたけど、残した借金の返済が大変だ」
K氏は30代で釣りの好きなナイスガイ。今でも借金返済のため家業に勤しんでいます。
今の世の中では不思議に思われるこの話の経緯が知りたくなって、青森市に問い合わせたところ桜川町内会に関連資料があると聞き、K氏と一緒に桜川町内会事務所を訪問してきました。
夏祭りの準備に忙しそうな事務所で、現在の桜並木の状況や当時を知る方からの説明を聞き、資料も見せていただきました。毎年春の祭りの写真は大勢の見物客で賑わっていて、この桜並木が多くの人から愛されていることがわかります。
花びらや落ち葉の掃除が大変だという話に続いて、
「でもこの桜があってよかった。私たちは山上桜と名付けてもいいと思っている」とも。
K氏によると、山上清三郎氏は周囲に迎合したり擦り寄ったりはしない人だったという。ただ思いつきで突拍子もないことをする所があると。
「桜がない」という住民の言葉が山上清三郎氏にとってどんな意味があったかは知る由もありませんが、その後山上氏は三内霊園や陸軍墓地、横内から雲谷までの旧道にも桜の植樹をしています。
津軽方言に「もつけ」という言葉があります。
現在では、お調子者・お人よし・おだてに乗る人、という意味で使われているそうですが、「人の嫌がる大切な仕事を買って出る人」という意味もあると聞いた事があり、その意味で山上清三郎氏はまさに「もつけの人」だと感じました。
町づくりに必要なのは、ばか者・若者・よそ者。40年も前にすでにその役割を買って出ていた山上清三郎氏の残した桜は、今でも地域の核になり多くの人の目を楽しませています。
後日、この話をブログに書くための承諾をK氏に問い合わせたところ、「むしろ名誉なことです」という返事を貰いました。
「今、やんちゃな子を一人預かっているんですよ」そう語るK氏も「もつけ」の血をひく一人なのでしょう。
4月下旬には桜川町内会と桜川商店会によるライトアップや、道路を車両通行止めにしての祭りが開催されています。
青森市内で一番早く咲きだすといわれ枝ぶりの良い大木である桜川の桜は、40年程前に一人の人物の寄付によって植えられたのでした。
昭和41年、それまでは田んぼの広がるこの地区に青森県住宅供給公社が桜川団地を造成し、同年に分譲を開始しました。当初この道路にはプラタナスが植樹されていましたが、42年に青森市の議員による視察の際に、すでに入居していた住人から「桜川という地名なのに桜の木は一本もない」という話が出て、当時青森市議会議員であった山上清三郎氏が個人でソメイヨシノの苗木900本程を寄贈しました。
43年春、十数戸の住民総出で、桜の木は一日で植えられたそうです。山上清三郎氏は荒川に住んでいましたが、氏の呼びかけにより荒川の住民有志もバスに乗って桜川の植樹の手伝いに出かけたとも聞きました。
当初は900本近くあった桜の木も、枯れたり傷んだものを伐採し、現在は350本。
植樹に携わった桜川住民にも桜の木は分けられ、現在でも何本かは個人の家の庭にも植えてあるとのこと。
私がこの話に興味を持ったのは、ネット上の友人であり故山上清三郎氏の孫でもあるK氏の話からでした。
「祖父さんは借金で桜の木を植えたけど、残した借金の返済が大変だ」
K氏は30代で釣りの好きなナイスガイ。今でも借金返済のため家業に勤しんでいます。
今の世の中では不思議に思われるこの話の経緯が知りたくなって、青森市に問い合わせたところ桜川町内会に関連資料があると聞き、K氏と一緒に桜川町内会事務所を訪問してきました。
夏祭りの準備に忙しそうな事務所で、現在の桜並木の状況や当時を知る方からの説明を聞き、資料も見せていただきました。毎年春の祭りの写真は大勢の見物客で賑わっていて、この桜並木が多くの人から愛されていることがわかります。
花びらや落ち葉の掃除が大変だという話に続いて、
「でもこの桜があってよかった。私たちは山上桜と名付けてもいいと思っている」とも。
K氏によると、山上清三郎氏は周囲に迎合したり擦り寄ったりはしない人だったという。ただ思いつきで突拍子もないことをする所があると。
「桜がない」という住民の言葉が山上清三郎氏にとってどんな意味があったかは知る由もありませんが、その後山上氏は三内霊園や陸軍墓地、横内から雲谷までの旧道にも桜の植樹をしています。
津軽方言に「もつけ」という言葉があります。
現在では、お調子者・お人よし・おだてに乗る人、という意味で使われているそうですが、「人の嫌がる大切な仕事を買って出る人」という意味もあると聞いた事があり、その意味で山上清三郎氏はまさに「もつけの人」だと感じました。
町づくりに必要なのは、ばか者・若者・よそ者。40年も前にすでにその役割を買って出ていた山上清三郎氏の残した桜は、今でも地域の核になり多くの人の目を楽しませています。
後日、この話をブログに書くための承諾をK氏に問い合わせたところ、「むしろ名誉なことです」という返事を貰いました。
「今、やんちゃな子を一人預かっているんですよ」そう語るK氏も「もつけ」の血をひく一人なのでしょう。
春一番の花
2010年03月25日 12:26
























